トランススケール量子科学国際連携研究機構

目的と理念

トランススケール量子科学国際連携研究機構は、「量子」をキーワードとして、物性物理から宇宙論に至る横断的研究のプラットフォームを企図して設立された組織です。
組織としての研究目標は、量子力学を基軸とした、宇宙論から固体物理に至る、物理の階層構造を貫く新概念や新分野の創出、またそれに基づいた量子技術の基盤構築です。

設立の背景

現在、高エネルギー物理における量子論が物性物理学に変革をもたらし、新しい概念や量子技術を生み出しています。例えば、素粒子ゲージ理論の文脈で提案されたトポロジカルな場の理論は、現在は量子ホール効果などの物質中の現象を記述するモデルとして認知されており、フォールトトレラントな量子計算や量子メモリのプラットフォームになるものとして注目を浴びています。
また、素粒子物理学においてニュートリノを記述するモデルとして導入されたワイルフェルミオンが、近年物質中で発見され、それが今新たな高速駆動メモリの開発に繋がっています。
こうした量子技術がさらに発展し、量子コンピュータや量子通信、量子デバイスなどが汎用化する未来社会を見据えた上で、物性、量子情報、素粒子、宇宙論、数学と、分野を横断した共同研究を推進し、その中で基礎研究の成果をいち早く取り入れた量子技術の基礎開発を行う目的の下、本連携機構が設立されました。

横断的、汎階層的な研究領域

宇宙論、素粒子から物性物理に至る幅広い階層において横断的な研究を行うため、理学系研究科、IPMU、物性研究所、低温科学研究センターという東京大学の研究環境を結集し、互いに連携する研究領域として、「物質宇宙基礎論の創成」「量子マテリアルの創成」「量子情報技術の創成」「量子先端計測技術の創成」の4つを設定しています。
また、連携部局の教員や研究者から成るタスクフォースを設置し、助教クラスのチーフサイエンティストを筆頭として、横断的・多角的研究のための戦略テーマの設定を行っています。

物質宇宙基礎理論
の創成

量子もつれによる宇宙の時空構造の解明などの最先端の量子論を物性科学へ展開による量子技術の基盤の創成

量子先端計測技術
の創成

超高分解能の量子応答計測の開発や、極限環境下の量子極限状態の生成・観測

量子マテリアル
の創成

量子効果に守られた強靭な機能性を示す物質などの開発

量子情報技術
の創成

量子シミュレーションなど幅広い量子情報処理の実現に向けた研究開発

国際的研究プラットフォームの
構築

幅広い研究領域を横断する高度な研究成果のため、異なる技術を持つ研究グループが互いに連携ネットワークを形成し、教員、若手研究者、大学院生が国内・海外の部局間・研究室間で、戦略的に研究資源を活用することができるような、国際的研究プラットフォームづくりを目指しています。
そのため、世界各国の国際連携拠点から教員を招聘し、外国の若手研究者を積極的に受け入れるなど、人材の流動化を図っています。また、これらの取り組みを戦略的に行うため、ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレータを筆頭とする国際戦略室を設置して、国際協定や人材交流に臨んでいます。

東京大学

  • 理学系研究科
  • 物性研究所
  • カブリ数物連携宇宙研究機構
  • 低温科学研究センター

海外

  • プリンストン大学
  • ジョンズホプキンズ大学
  • カリフォルニア大学
  • ブリティッシュコロンビア大学
  • マックスプランク研究所
  • エコールノルマールスペリュール
  • CEA/CNRS
  • SACLAY/Grenoble

「量子ネイティブ人材」の育成

量子情報を始めとする量子技術が汎用化する未来社会を見据え、量子技術を操り、また自身で構築できるような若手人材の育成を目指しています。そのため、若手人材の国際連携拠点への派遣、若手による創造的研究プロジェクトの支援や、企業による博士支援システムの構築などを行っています。